アジアの実情
自衛隊を法によって定められた国軍としての「軍組織」にするためには憲法九条を改め、そして自衛隊員を法的に監視・保護するためには「軍法」が必要だということを「核共有は、いま議論すべきでしょうか(10)」で述べました。
憲法9条を修正し国軍の存在を正常な認識とするなら、その法的な根拠と行動の制約の双方を担保するため、軍刑法の制定と、それに基づいて軍人を裁く軍事裁判所の設置が必須となるということも書きました。軍刑法とは軍人・軍属と捕虜の犯した軍事犯罪についての処罰を定めた法律のことで、軍法のことです。「核共有は、いま議論すべきでしょうか(10)」では、標津町沿岸部における有事の例も書きましたが、武力行為に及ばざるを得なかった隊員の結果的な過ちは、特別法廷などを設置しての審議は今の法律ではできません。
それは憲法76条第二項に拠っています。
「特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない」
この条文は、現行の法律で法務省の管轄下にある裁判所以外での裁判は認められていないということですから、「軍法」を新設するにはこの憲法から質さなくてはなりません。
ことほどさように、自衛隊を法的にも正常に保とうとするには、このようにさまざまな問題が横たわっていて、軍事アレルギー(ピエロは〝平和ボケ”と思うのですが)の人がたくさんいる日本では本当に高いハードルが横たわっています。
暴虐国家ロシアに対するアジアの国々
国家防衛について普通の議論をしようとしても福〇〇穂のような能天気たちはきっと、金切り声を張り上げて「戦争反対、武力反対!」と叫びまくるでしょうが、そういう輩には次のような現状がどのように映っているのでしょうか。
米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで民間人とみられる多数の遺体が見つかったことを受けた対応で、「ロシアが人権理事会に参加しているのは茶番だ」と批判しました。こうした背景のなか、アメリカなどはロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止するよう求める決議案を国連総会に提出し、その採決が2022年4月7日になされました。
以下が、投じられた票の詳細です。(国連公式HPからの転載)
Suspension of the rights of membership of the Russian Federation in the Human rights Council.
賛成: 93
反対: 24
棄権: 58
欠席: 18
AFGHANISTAN
ALBANIA
ALGERIA
ANDORRA
ANGOLA
ANTIGUA AND BARBUDA
ARGENTINA
ARMENIA
AUSTRALIA
AUSTRIA
AZERBAIJAN
BAHAMAS
BAHRAIN
BANGLADESH
BARBADOS
BELARUS
BELGIUM
BELIZE
BENIN
BHUTAN
BOLIVIA (PLURINATIONAL STATE OF)
BOSNIA AND HERZEGOVINA
BOTSWANA
BRAZIL
BRUNEI DARUSSALAM
BULGARIA
BURKINA FASO
BURUNDI
CABO VERDE
CAMBODIA
CAMEROON
CANADA
CENTRAL AFRICAN REPUBLIC
CHAD
CHILE
CHINA
COLOMBIA
COMOROS
CONGO
COSTA RICA
COTE D’IVOIRE
CROATIA
CUBA
CYPRUS
CZECHIA
DEMOCRATIC PEOPLE’S REPUBLIC OF KOREA
DEMOCRATIC REPUBLIC OF THE CONGO
DENMARK
DJIBOUTI
DOMINICA
DOMINICAN REPUBLIC
ECUADOR
EGYPT
EL SALVADOR
EQUATORIAL GUINEA
ERITREA
ESTONIA
ESWATINI
ETHIOPIA
FIJI
FINLAND
FRANCE
GABON
GAMBIA
GEORGIA
GERMANY
GHANA
GREECE
GRENADA
GUATEMALA
GUINEA
GUINEA-BISSAU
GUYANA
HAITI
HONDURAS
HUNGARY
ICELAND
INDIA
INDONESIA
IRAN (ISLAMIC REPUBLIC OF)
IRAQ
IRELAND
ISRAEL
ITALY
JAMAICA
JAPAN
JORDAN
KAZAKHSTAN
KENYA
KIRIBATI
KUWAIT
KYRGYZSTAN
LAO PEOPLE’S DEMOCRATIC REPUBLIC
LATVIA
LEBANON
LESOTHO
LIBERIA
LIBYA
LIECHTENSTEIN
LITHUANIA
LUXEMBOURG
MADAGASCAR
MALAWI
MALAYSIA
MALDIVES
MALI
MALTA
MARSHALL ISLANDS
MAURITANIA
MAURITIUS
MEXICO
MICRONESIA (FEDERATED STATES OF)
MONACO
MONGOLIA
MONTENEGRO
MOROCCO
MOZAMBIQUE
MYANMAR
NAMIBIA
NAURU
NEPAL
NETHERLANDS
NEW ZEALAND
NICARAGUA
NIGER
NIGERIA
NORTH MACEDONIA
NORWAY
OMAN
PAKISTAN
PALAU
PANAMA
PAPUA NEW GUINEA
PARAGUAY
PERU
PHILIPPINES
POLAND
PORTUGAL
QATAR
REPUBLIC OF KOREA
REPUBLIC OF MOLDOVA
ROMANIA
RUSSIAN FEDERATION
RWANDA
SAINT KITTS AND NEVIS
SAINT LUCIA
SAINT VINCENT AND THE GRENADINES
SAMOA
SAN MARINO
SAO TOME AND PRINCIPE
SAUDI ARABIA
SENEGAL
SERBIA
SEYCHELLES
SIERRA LEONE
SINGAPORE
SLOVAKIA
SLOVENIA
SOLOMON ISLANDS
SOMALIA
SOUTH AFRICA
SOUTH SUDAN
SPAIN
SRI LANKA
SUDAN
SURINAME
SWEDEN
SWITZERLAND
SYRIAN ARAB REPUBLIC
TAJIKISTAN
THAILAND
TIMOR-LESTE
TOGO
TONGA
TRINIDAD AND TOBAGO
TUNISIA
TURKEY
TURKMENISTAN
TUVALU
UGANDA
UKRAINE
UNITED ARAB EMIRATES
UNITED KINGDOM
UNITED REPUBLIC OF TANZANIA
UNITED STATES
URUGUAY
UZBEKISTAN
VANUATU
VENEZUELA (BOLIVARIAN REPUBLIC OF)
VIET NAM
YEMEN
ZAMBIA
ZIMBABWE
国連人権理事会の理事国の資格が停止されたのは、2011年に反政府勢力を武力で弾圧していたカダフィ政権下のリビアが停止されて以来、2例目です。勿論、常任理事国ではこれが初めてです。
ロシアのクズミン国連次席大使はこの決議案について「現地の実際の人権状況と何の関係もない。ねつ造された資料や演出された映像、フェイクに基づくわれわれへの誤った侮辱を拒否する」と述べましたが、そこに何の説得力もないことは明々白々です。この決議案を主導したトーマスグリーンフィールド米国国連大使は演説で「重要で歴史的な瞬間だ。国際社会はきょう正しい方向へ一歩踏み出した。このいわれのない不当な戦争についてロシアに責任を負わせ続け、ウクライナの人たちに寄り添うため力を尽くそう」と各国に呼びかけました。
しかし、これだけの事実を前にしても中国や北朝鮮など24か国が反対し、58か国が棄権したことは、人道や人権などという言葉は「政治」の前ではその重みが著しく減少してしまうことを私たちはリアルタイムで体験しました。
ロシアと兄弟である中国の張軍国連大使は、「加盟国の間の分断を悪化させ対立の激化につながる。火に油を注ぐようなもので、紛争の緩和や和平交渉の進展には役に立たない。人権問題の政治化に断固として反対し、人権問題をめぐる対立的なアプローチに反対し人権の名のもとにほかの国に圧力をかけることに反対する」と主張しロシアをあくまで擁護する姿勢を崩しません。自国の「人権問題」が同じように国際社会でやり玉に挙げられるのは避けたいという思惑が見え見えです。
ロシアは「特別で特権的な(special and privileged)」戦略的パートナー」であると公言しロシアが最大の武器供給国であるインドは、棄権しました。
「ブチャでの多くの民間人の殺害は深く憂慮すべきもので、私たちはこれを明確に非難する。インドは一貫して平和と対話と外交を支持してきた。インドがいずれかの側を選ぶとするなら、それは平和の側であり暴力の即時終結を求めるものだ」というのがその理屈ですが、それは国家としての品格に欠ける軽薄な政治的な言説であることは明らかです。
ロシアとこの二カ国の様子をみたのが、東アジアの国々でした。
ミャンマーとフィリピンは賛成しましたが、中国に経済を握られているベトナムとラオスは反対にまわり、その他は卑怯にも「棄権」という立場をとりました。これは有事の際に彼らがどのような態度を取るのかを端的に表していますし、少なくとも東アジアにおける日本は、(ピエロは今でも中国が宗主国の韓国は斟酌しませんので)ほぼ孤立無援状態にあることが改めて示された事案であったと思います。
このような状況下で、政治家たちはいつまで平和ボケ勢力の顔色を窺っているのでしょうか。